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千住「うさぎ家」2

久し振りに仕事帰りの外食。春の気候を指して「三寒四温」とはいうがそれは日中だけのことで、夜になるとまだまだ寒い。こういう時は一杯呑みたいものだ。そこで帰り道に途中下車するとなると、住んでる土地柄、どうしても「千住」か「梅島」に限られてしまう。
たまには梅島の「泰山」で熱い水餃子を肴に一杯と行こうかとも考えたが、

「うさぎ家」で食べるのもよいな

と思うと、なんだか無性にかき揚げが食べたくなり、ひょいと千住で下りる。風が冷たいから足早に東口を商店街の外れへと急げば、軒先を煌々とランプが点っている。磨りガラスの戸に手をかけて、ちょいとなかの様子を外から伺うと、うっすらと人影が写っている。

今日は結構、繁昌してるようだが、大丈夫かな

と思いながら開けると案の定、カウンタは二組の先客があったが、取り敢えず店主に様子を聞いてみれば、一人分空いてるからと席を勧めてくる。二組の客も自然と席を広げてくれるのは、矢張り人情の通った土地柄とでもいうべきか。
ここで出すものはどれもたっぷりとしてて、しかも安い。基本的には居酒屋だが、懐が寂しい時でもここなら十分に満足のいくものが食べさせてもらえる。また、旬のものもよく取り揃えてあって、店主の気の遣い方に流石の一言だ。「かき揚げ丼」を待っている間、レモンハイを一杯やっていると、用事で外に出ていたらしい妻女が戻ってきた。

あら、お兄さんお久し振りだねえ
ウチの店をご贔屓にしてくれてありがとうねえ

まだ二度目だというのにしっかりと顔を覚えられている。そこで、ふと、

なんでこうも顔が割れてるんだよ

清澄氏の言葉が頭を過ぎった。別に目立ったことをしてるわけじゃあない。ただ普通に店に入って、食べて、話の好きな店主であれば、少し語らうくらいしかしていないのだが…
少しして注文した「かき揚げ丼」が出てくる。相変わらず、かき揚げが大きい。出てきたの手に取って、

相変わらず、凄いボリュームだね
食べられるかな

といえば、店主がニヤリと笑う。
早速とばかりに、七味と塩を少し振り掛けて、熱々のうちにかき揚げ丼を掻き込む。下に敷かれたご飯に掛っている濃い目のタレがかき揚げとよく合うから、ひと口ふた口と進んでしまい、食が細くなりつつあると思う僕でもペロリと平らげてしまった。先程の店主の笑みは、きっとこれを見越してのものだったのだろう。
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↑うさぎ家の「かき揚げ丼」
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[我楽多品-2]牛玉宝印(相州大山寺版)

法寸:たて16.7×よこ24.4 (cm)
数量:1枚
購入場所:雨降山大山寺(神奈川県伊勢原市大山)
購入日:平成18年10月27日
備考①:大山寺では「カラス札」と呼ぶ
備考②:「雨降山大山寺」の陽刻朱印あり

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牛玉宝印の(記念すべき)第1号。
全てはこの相州大山寺版牛玉宝印の札から僕の牛玉宝印収集始まった。

ミュージカル「阿国」

某大学の学生を連れて新橋演舞場に木の実ナナ主演ミュージカル「阿国」を見に行く。
二幕構成のうち、一幕目は小気味よいテンポで話がトントントンと進み、見ていて飽きることがなく、それこそ90分が「あっ」という間に過ぎた。それに比べて二幕目はやや長尺に思う。あと10分は縮めてもっと中身を膨らましたほうがよかっただろう。特に肝心の〆めにメリハリがなくて折角の流れを台無しにしていた。
最初から最後まで緞帳やら回り舞台を一切使わずに場面構成したのはよい工夫だとは思うけど、最後くらいは緞帳を下ろして仕切ったほうが、客としてはわかりやすい。幕を使いたくないなら、柝を打つでもよい。今回のやり方だと、客は

終わったのかな

と思いながらも拍手するタイミングがわからず、なんだか中途半端な感じがして、気持ちがすっきりしない。矢張り、幕引きしてから「上々颱風」のライブなりカーテンコールなりに繋げてもらいたいもんだね。
しかし、まあ、一幕目で見せた「天下無双」の美男子・猪熊少将(正しくは左近衛少将猪熊教利)役の池畑慎之介の舞はよい。流石は大坂地唄舞の吉村流を名乗っていただけあり、しっかりしている。また、上條恒彦も声量に膨らみがあって見事だった。そして、主役の木の実ナナも還暦を迎えたとは思えないほど頑張っていたが、今回のミュージカルは出突っ張りのため、体力的に可成り大変だったんじゃあないかなと思ったね。

銀座「弁松」三越出店

歌舞伎座や新橋演舞場へ芝居を見に行く時の楽しみのひとつは、幕間の食事だろう。これは江戸の昔から、みんな楽しみにしていたことだ。
この幕間の楽しみを象徴するものとして菓子・弁当・寿司が挙げられ、その頭文字をとって「かべす」といわれている。けど、実際に「かべす」ってやつが始まったのは明治の頃からなんだよ。明治の演劇改良運動だったかの人々が始めたのが最初だったような気がする。今でこそ「かべす」といっちゃあ、なかなか粋な芝居見物のあり方みたいな取られ方しているけど、出始めの頃は「さもしい」「貧乏ったらしい」ように見えたそうだ。たしか岡本綺堂あたりがこのことを書いていたはづだ。
さて、話を現代に戻そう。
僕が芝居を見に行く時は銀座まで出て、三越の地下で調達する。いつもは夜の部で見ることが多いから、「梅林のカツ」の「カツサンド」を買っていくわけだが、今回は久し振りの昼の部だ。昼前には銀座にいたんで、

流石にこの時間で売り切れはないだろう

と「梅林」の前を通り過ぎる。心のなかで

今回はすまぬ。折角の昼だ。浮気させてくれっ

と謝りながら「(日本ばし)弁松」に向かう。案の定、弁松は十分に弁当を用意して待っていてくれた。
弁松は嘉永三年から続く仕出し弁当の店で、戦前・戦後の歌舞伎座に慣れ親しんだお爺ちゃん、お婆ちゃんには懐かしい店だろう。なもんだから、銀座三越の出店じゃあ夕方を待たずして売り切れてしまう。だから、いつも夜の部を見ている僕は「梅林」にしていた。それに夜だと、その後に「軽く一杯」が多いため、あまり本格的に食べちゃうとそっちに影響を及ぼしてしまう。
しかし、今日は昼の部だし、終演後に呑むとしても、外はまだ少し明るいから、ちょいと街ブラして腹をこなせば影響がないからってことで「弁松」にしたわけだ。
弁松の味を手軽に味わえるのは矢張り「赤飯折詰弁当」だろう。蒸し上げた赤飯に、かなり濃い目の甘辛に味付けされた煮〆がいかにも江戸前の感じがする。煮〆のひとつ、焼魚のひとつをとっても「弁松」の手間を惜しまない姿勢がよく表れてるように思う。赤飯、玉子焼きにしてもそうだ。これを頬張りながら一幕目の素人評に花を咲かせ、次の幕が開くのを待つのは実に楽しいひと時だ。
幕間の素人評で思い出したが、改装される以前の演舞場の3階にあった「かっぱ家」の「おでん定食」も懐かしい。小柄な老店主が作る関西風の所謂関東煮と呼ばれるおでんは、透明なつゆに大振りのはんぺん、大根、薩摩揚などが四つ五つ。それこそ、

ごろっ

と皿に盛られていて、たっぷりと溶き芥子をつけて熱いのを頬張るのが堪らなくよかった。これに茶飯で掻き込みながら、芝居談義によく花を咲かせたものだ。改装後も「食事処かべす」でおでん定食自体は存続しているようだが、味はあの老店主が作っていた時のまままのかは知らない。いづれにせよ、僕にとって芝居見物と食べ物は切っても切れぬ関係なのは確かだ。
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↑日本ばし弁松の「赤飯折詰弁当」(銀座三越出店)

駒込「六義園」

JR駒込駅から本郷通りを白山のほうに向かうと、直ぐに「六義園」が見えてくる。
六義園は徳川綱吉の側用人柳沢吉保が手掛けた庭園だ。和名を「むくさのその」という。また「染井山荘」と呼ぶこともある。今あるそれは、吉保が手掛けた頃のと大して広さは変わらないというから当時の大名屋敷がいかに広いかがわかる。
六義園には「特別名勝」の肩書がある。城や寺のように「建物」の場合は国宝っていうのに、同じ定義上にあるのかどうかは知らないけど、「庭園」になると特別名勝と肩書が変わるのはちょっと不思議だが、まあ、よい。
庭園は回遊式に造られていて、随所に茶屋や四阿が設けられている。なかでも「つつじの茶屋」は、明治に建てられた時のままだっていうのだから驚きだ。
府中に住む友人と駒込駅で待ち合わせて、六義園に行くと丁度、ボランティアスタッフによる庭内ツアーがはじまるとこだ。それならってんで、ほかの来訪者の後ろに付いて歩く。
一人で何を気にするわけでもなく、ぶらぶらと庭内を歩いたり、ベンチで休んだりと思い思いに過ごすってえのもよいが、折角、ツアーに居合わせることが出来たんだから、こういうのを素直に利用するっていうのも手だ。所々で解説付きだから、

へえ。なるほどねえ

と思いながら見る景色はまた一味違う。それでいて、ふらっとツアーから離脱して、よいポイントを見つけては足を止めたり腰を下ろしたりして、庭内のそれを眺める。回遊式庭園はこういう自分の好きに時間を使えるところがよい。
今年は例年になく暖冬だが、ここに来て春が足踏みしている。つまり、寒いってわけよ。当然、名物の枝垂桜も咲いてない。それでも日向にいると日差しは結構暖かい。丁度、辛夷の花が満開で日向から巨木を眺めていると、澄んだ空に白い辛夷の花がフワフワって浮かんでるような感じがなんともよい。
その辛夷の巨木の近くに「心泉亭」という茶室が設けてあり、ここで一服いただける。心泉亭は庭を望むようにして開け放たれてあり、一服しながらの眺めは何とも格別だ。
一服いただくっていったって、こういう席での一服にお作法だのなんだのと鯱張る必要はない。まあ、作法を知っていて損はないだろうが、茶会に呼ばれたんじゃあないんだから、楽にしていればよい。
席に着いて庭を眺めているとおうすが茶菓子と一緒に運ばれてくる。
今回の茶菓子は「菜の花に舞う蝶」を象ったとかで、甘いなかにも春らしいさっぱりとした感じがしてよい。
ただ、前面が完全に開け放たれてるため、

寒い

いくら後ろでハロゲンヒーターがフル稼働していても、一台だけじゃあ、とてもじゃあないが吹き付けてくる風で、暖かさなんかは背中に微かに伝わってくるだけだ。流石にこれには閉口した。なんとかのやせ我慢じゃあないが、一服終わるまでは普通に振る舞っていたものの、内心、

こういう寒い日は雪見障子越しからの眺めでよい

と寒がりな僕はずっと思ってた。とうとう、堪えられなくなってハロゲンヒーターと睨めっこする。しかし、新緑が目に眩しい初夏の頃なら、ここで一服しながらの眺めは格別だろう。だから、

今度は新緑の頃にまた来ようじゃあねえか

と思った。
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↑駒込「六義園」正門
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↑六義園名物の枝垂桜だが咲いていなかった
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↑庭内の風景
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↑庭内「藤代峠」からの一望はなかなかだ
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↑茶室「心泉亭」でおうすを一服
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↑心泉亭からの庭内の眺め

[我楽多品-1]角大師札(善光寺大勧進版)

部屋の整理、荷物の整理、我楽多の整理、データのカード化を兼ねて、できたら毎週日曜日にこれまで集めてきた「我楽多品」を1点ずつ公開していこう。

法寸:たて19.4×よこ9.2 (cm)
数量:1枚
購入場所:善光寺大勧進(長野県長野市元善町)
購入日:平成18年8月28日

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角大師札の(記念すべき)第1号。
全てはこの善光寺大勧進版角大師の札から僕の角大師札収集が始まった。

冬の京都・旅日記第四日目

第四日目・三月三日(土)曇り、日中暖かし
河原町三条宿・一日バス券 500円
阪急四条駅地下・ロッカー代 200円 200円清
祗園原了郭・八角竹入黒七味 840円
黒七味詰替え袋二個 734円
黒七味豆袋 525円
同川勝・漬物二個 700円
ちりめん山椒 735円
知恩院門前コロッケ屋・かにクリームコロッケ 110円
粟田口白川沿い古川商店街八百屋・たこ焼き 150円 150円清
粟田口尊勝院・庚申札 500円
みくじ 100円
さいせん 10円
堺町二条上るキンシ正宗・町家麦酒 630円
スパイシーポテト 315円
酒カステラ 315円
寺町革堂 さいせん 10円
線香 30円
松原通六波羅蜜寺・さいせん 10円
宝物館 300円清
清水寺・出世大黒像 900円
ミニ出世大黒像二個 700円
清水寺参道西尾八ツ橋・おたべ三個 1500円
松原通力餅食堂・衣笠丼 670円
京都駅前コンビニ・ジュース 147円
ストロベリーパイ 100円
京都駅構内・ペットボトル 190円
竹ノ塚駅よりタクシー代 900円
無事帰宅、夜11時なり

南禅寺門前「無隣菴」

瓢亭からの戻り道、隣の無隣菴に寄る。
無隣菴は山県有朋の別荘で、明治の京都を代表する造園師・七代目植治こと小川治兵衛に指示して作らせた回遊式の庭園が広がっている。また、庭園の隅には新家孝正が手掛けた洋館もある。
今年の京都は例年と比べても格段に暖かく、雪も二度しか降ってないという。明らかに温暖化の影響だろう。その冬の柔らかい日差しの下をのんびりと歩く。どうやら僕は回遊式庭園が性に合っているようだ。己の心と向かい合う枯山水系の庭も勿論、悪くはないが、やっぱり落ち着かない。ただじっと見てるだけっていうのが次第に飽きを呼ぶね。それだけ、まだまだ俗人だということだ。
大変手入れの行き届いた庭内はのんびりと眺めていても、歩いていても気持ちがよい。況してや、その前に隣の瓢亭でよい心持ちになっているから、余計に無隣菴の眺めも気持ちよく映る。それに季節も外れているせいか、ほかに客もこない。またしても独占状態だ。
そこを母屋からはじめて、ぐるりとひと巡りすると、洋館にたどり着く。見た目は経年の汚れから決して奇麗なもんじゃあない。それにこの庭園にはなんかしっくりと来ない気もするが、庭の隅にあまり目立たない感じに建ててあるから、まあ、いい。取り敢えず、中に入ると外観同様、コンパクトにまとまった洋館だ。日本人は大作りなもの輸入してきて、それをコンパクト化することに関しちゃあ、実に優れてるよ。けど、単にコンパクト化するだけじゃあなくて、矢張り意匠を凝らすことは忘れてない。
その洋館の二階で日露戦争開戦直前に山県有朋をはじめ、伊藤博文、桂太郎および小村寿太郎といった錚々たるメンバーが外交方針を決めたという。現在もその時のディスプレがそのままの形で公開されている。
だが、正直なところ、日露戦争の直前にそんな会議があったなんて全く知らなかったから、思わず、同道の清澄氏に

無隣菴会議って有名なの? 僕、知らないんだけど・・・

と聞いてしまったくらいだ。
それで今、手元にある辞典を引いてみたけど、よいのか悪いのか、そのような項目は、ない。
さて、4人が膝を交えて話し合った一室は狩野派の障壁画も素晴らしいが、天井も見ものだ。格天井のひと枠ごとに立派な装飾が施されている。しかも、装飾部の周囲は漆が施されていると見え、贅は凝らしていてるが嫌味な派手さはなく、室内の雰囲気とよく調和している。
洋館を出て、母屋に戻ると既に緋毛氈の前に茶菓子が用意されていた。無隣菴は拝観料と一緒におうす代を払えば、母屋で一服いただける。庭もひと回りしたことだしってことで早速、おうすを頂く。茶菓子は「真盛豆」だ。真盛豆とは、北野の西方尼寺の尼僧が真盛上人から伝授された菓子で秀吉の北野大茶会でも供され、同席した細川幽斎はこれを「苔むす豆」といったらしい。
その真盛豆の中身は煎った丹波の黒豆に黄粉を何度もかけて、さらにその上に青海苔を振ったもので、確かに見た目は苔むしてる感じがする。それで庭を眺めながらおうすを頂いてると、日頃の喧騒などすっかり忘れてしまう。実によい心持ちだ。
おうすを頂いて母屋の縁側で庭を眺めながら日向ぼっこしていたら、時計はもう12時を指そうという。瓢亭といい無隣菴といい、時間を贅沢に使わせてもらえる。
そこで、心は決まった。清澄氏もどうやら僕と考えは同じようだ。

もう一日、延泊しよう

と縁側で日向ぼっこしながら、二人とも徐にケータイを取り出し、今日のホテル予約をしようとネット検索する。それで結局、今朝引き払ったばかりの宿にまた申し込んだ。荷物はクロークに預けたままだ。

どの面提げて、戻ろうかね

といいながらも、まだ縁側での日向ぼっこが止められない。
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↑無隣菴の回遊式庭園の風景
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↑ここで日露戦争直前に外交方針を決めたそうだ
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↑無隣菴会議が行われた部屋の格天井
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↑母屋で「真盛豆」と一緒におうすを一服

南禅寺畔「瓢亭」別館

朝9時30分、宿を引き払う。南禅寺門前の「瓢亭」へ朝がゆを食べに行くため、取り敢えず、荷物をクロークで預かってもらう。
瓢亭には初日の夕方に「今日(3/2)の10時」で清澄氏と僕の二人分の予約を入れておいた。老舗料亭といえど予約さえすればなんの問題はないし、予約に鯱張る必要などない。

それでは別館で10時にお待ちしております。

これで予約は完了。実に簡単なことだ。あとは時間に合わせて行けばよいのだ。
瓢亭は山県有朋の無隣菴の真隣にある。本館は数奇屋造りの渋い佇まいで、ちょんまげをした旅人が軒先の床几で草鞋を脱いでいそうな感じの雰囲気が十分に漂っている。料亭としての瓢亭は天保頃からだという。その隣に設けられているのが瓢亭別館で、本館で出す名物の「朝がゆ」を手頃な価格で楽しめる。
そこへ僕と清澄氏が殆ど手ぶらのラフな格好でひょいと暖簾を潜る。
仲居に案内されて奥に行くと着物を召したご婦人たちが4人ほどで食後のお茶を楽しんでいたところだ。あとは誰もいない。
まあ、夏や休日ならまだしも、冬の平日で朝10時、しかも価格だけをみれば、あまり安いとはいえない「朝がゆ」を予約してまで食べに来る人はあまり多くはないだろう。大体、リーマンは勤務時間中だしね。
庭に面した席に着くと仲居がやってきて

何かお召し上がりになりますか

と聞いてくる。そこで、清澄氏に

どうする?

と聞くと首を傾げる。仲居は

お酒かビールをご用意できますが

と続けてくる。
昨晩も居酒屋で呑んでた上に、朝の10時からまた酒を入れるのは、いくら身体を温めるためのものとはいえ、流石にどうかと思って遠慮する。第一、まだ朝飯すらも食べてないわけだ。その朝がゆより先に酒を入れるのは可成りの贅沢で、きっと最高に気持ちのよい酒になること請け合いだろう。けれども、まだ今日も始まったばかりだということで、ここは敢えて止した。
しかし、まあ、仲居からすれば僕と清澄氏はどんな客に見ただろう。ちょいと粋な旦那衆にでも見てくれたかな。

ちょいと若旦那…さささ、おひつどうぞ

いけねえなあ。まだ、お天道様が高えとこにあるぜ

まあ、いけずなことをいう若旦那…
きっと昨夜は祗園のあたりでよい夢でもみてたのでしょう…
だから、そんなこといって…この憎たらしい

痛えよ。お前、そんなに強く抓ったらいけねえぜ。
ここへは酔い覚ましで来ているんだから、止してくれよ

いや、いやいや…でもそんな若旦那のことが

と仲居相手に「湯屋番」もどきな誇大妄想はこれくらいにして、話を進めよう。
仲居が奥に引っ込むと、すぐに料理が運ばれてきた。いつも変わらない瓢亭の朝がゆ。懐石ではないが、まづは八寸と瓢箪型の三重。八寸には品川弥次郎が「一子相伝半熟鶏卵」と評した瓢亭名物のゆで卵がある。これが堪らなくよい。流石は名物としているだけはあるね。
瓢亭の出す朝がゆは全てがシンプルだ。しかし、そのシンプルさのなかに、矢張り客への気遣いが感じられる。予約した時間にちゃあんとに出せるよう準備が行き届いているから、熱いものは熱いうちに出てくるわけよ。だから、客も熱いうちに頂かなきゃ駄目だよ。遠慮なんかしてちゃ駄目だ。折角、作るほうが時間を見計らって、ベストな状態で供してくれてるんだから、客側もダラダラとくっちゃべって冷ますようなことをしちゃ、どうしようもないよ。まるで台無しってもんよ。特に白味噌仕立ての汁碗のやさしい温かさはなんとも堪えられない。ズズズッと啜ると朝からよい心持ちになるね。
最後に名物の「朝がゆ」が運ばれてくる。
ここの朝がゆは夏場と冬場では中身が異なる。夏場は一番出汁に薄口醤油を合わせ、葛でとろみをつけたのを真っ白な粥にかけて食べる「くずがゆ」。これに対して冬場は鶉の身を細かく刻んだものと菜っ葉を混ぜた「うずらがゆ」だ。この粥が実にお腹にやさしい。なんともいえない感じで、やさしく胃を癒してくれているようだ。食べ終わったあとの

ふぅ…

と吐く息まで温かい感じがする。
着物のご婦人たちももういない。別館は僕と清澄氏の二人だけの貸切状態になっている。庭の池を眺めると鯉がゆっくりと泳いでいて、日差しがやわらかに差し込んでくる。ここだけは外と比べて時間の進みが遅いようだ。
こりゃあ、先程の言葉は撤回しなきゃあならないな。値段のことをいうのは野暮の極みというものだが、これだけ至れり尽くせりの環境で小一時間かけて、のんびりと気持ちよく「朝がゆ」を味わえたことを考えれば、決して高いものではない。
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↑南禅寺門前「瓢亭」別館の外観
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↑別館といえど、なかなかの風格を感じさせる
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↑朝がゆのうち「八寸と瓢箪型三重」
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↑冬の名物「うずらがゆ」

冬の京都・旅日記第三日目

第三日目・三月二日(金)晴、日中暖かし
河原町三条宿・一日バス券 500円
南禅寺門前瓢亭・朝がゆ 4100円清
同無隣庵拝観 350円
おうす 300円
河原町三条宿・延泊代 5000円
河原町三条-大原・バス代 490円
大原三千院拝観 700円
角大師札二枚 200円
大黒・不動札 100円
みくじ 100円
秘仏御姿 500円
阿弥陀御姿 100円
不動御姿 100円
さいせん 20円
大原三千院門前漬物屋・アイスきゅうり 150円
大原-京阪三条・バス代 490円
三条自販機・タバコ 300円
六角堂さいせん 10円
六角通shop99・ジュース アイス 208円
京都駅復路新幹線切符代 11920円
河原町三条酒ヤ・ビール 268円
菓子 102円
三条通居酒ヤ・こがんこ 酒飯代 3000円

冬の京都・旅日記第二日目

第二日目・三月一日(木)晴、日中暖かし
河原町三条酒屋・ラムネ 53円
グミ 89円
ジュース 108円
寺町広小路廬山寺拝観 300円
角大師札 500円
みくじ 100円
さいせん 10円
聖護院山王町熊の社・さいせん 10円
牛玉宝印二枚 1000円
祗園社石段下ぶヽ家・うなぎ茶漬け 2100円
一乗寺曼殊院拝観 500円清持
みくじ 100円
さいせん 5円
修学院豆腐屋藤利・卯の花 120円
修学院-出町柳叡山電車・電車代 200円
三条木屋町自販機・タバコ 300円
六角寺町コンビニ・ジュース 105円
ミニカップ麺 92円
三条河原町酒屋 菓子二個 233円
団栗辻おでん屋蛸長・おでん 酒一本 3000円
新京極薬局・菓子二個 200円
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それでは「春夏冬、二升五合」をお願いまして、皆々様の御手を拝借。

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熊さん。今のお人で何人目だい?
著者寸描(プロフィル)

浮世名詮〔うきよのめうせん〕

Author:浮世名詮〔うきよのめうせん〕
東西東西~。
さて、これより語りまする者はその名を「名詮」と申しまする。

性格は可成ふざけて居りまして、朝イチから行動すればよいものを、昼も過ぎ、夕闇の濃くなる頃から東都のあちらこちらへ出没し、状況に応じて色々な人物を演じ分ける素ッ惚けた根無し草。

まあ、気楽に気楽にお付き合い下りまするよう、隅から隅まで、ズズいっとお頼み申し上げまする。

先づは

乍憚口上
乍憚口上」つづき
乍憚口上」むすび

を一読下さりまするようお願い申し上げまする。

千穐萬歳大入叶

熊八ブログをケータイしておくれっ
ちょいと、そこのお前さん。無視していくんじゃないよ。めうせんの「熊八ブログ」がケータイでも見ることが出来るっていうじゃあないか。おや、知らない?まあ、この人はなんて野暮なことをいいなさんのかねえ。
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