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雑司が谷鬼子母神縁日

早いもので、今年も一年が終わろうとしている。
先週末に取り敢えず御用納めもしたし、今週は残り数日間を世間並みに大掃除でもしようかと考えたが、枕元に雪崩寸前の状態で平積みにしてある文庫本の山を見ているだけで、気力が削がれ早々に手を引く…て引いちゃあいけないだろう、とは思うがどこから手をつけるべきなのかわからない。四方を本とコピーの山に大半を占拠され、空いた隙間には御札のコレクションや雑器、煙草盆なんかが占拠している。こんな状態じゃあ、右から左、左から右に荷物を動かすかで終わり、凡そ片付けになっていない。だったら、今年もまた放置して、気が向いた時に

えい、や!

でやったほうが効率がいいに決まっている。と理由をつけて外に出た。
ここ二、三日は随分と寒い。温暖化、温暖化と世間は騒いでいるが矢張り冬はそれなりに寒い。なにせ、数日前の関東北部では一晩に50センチを超す雪が積もったというのだから、温暖化というより、異常気象が故の

極端化

が起きているといったほうがいいのかもしれない。
まあ、それはそれとして、厳重に着込んで街に繰り出したもののどこへ行こうかと思い乍ら、ケータイで今日が28日であることを確認すると、ふと頭に

鬼子母神

が浮かんだ。8が付く日は鬼子母神の縁日だ。鬼子母神といえば入谷か雑司が谷だが、入谷界隈は鬼子母神に限らず割と繰り出すことが多いから、

今回は久し振りに雑司が谷へ廻ろう

と足を進める。
住んでいる土地柄、雑司が谷へはなんといっても三ノ輪橋から都電荒川線でのんびり揺られ乍ら行くのが一番だが、近頃、池袋―渋谷間を「副都心線」が開通したため、折角だからこれに乗って行くのも手だろうと地下鉄で行くことにした。
しかし、思うのだけれど、東京は恐ろしいまでに地下鉄が発達しているが、新しい線になればなるほど、地中にどんどん深く潜っていく。ここまで地下鉄網があちらこちらへ交差しているのを見ると地下要塞だね、全く…

さて。雑司が谷の辺りというのは、池袋や目白とそれ程離れていないんだが、どことなくのんびりとした地域で、大都市が持つ独特の喧騒さはない。
都電の線路を渡り、欅並木を通り過ぎる。空気は冷たいが陽射しは柔らかだ。余談だがこの並木が東京都の指定を受けていることは、土地の人でもない限り余り知られていない。「ちゃんと指定しましたよ」の石碑も建っているんだけど、こちらも余り気付かれない。可哀相な鬼子母神の欅並木…その並木をのんびり鬼子母神に向かうと、境内で

骨董市…

が開かれていた。骨董市の後ろに「…(三点リーダ)」を付けたのは、果たして市といってよいのかわからないからだ。なにせ

たった三店

ばかりの骨董市。しかもどこで油を売っているのやら主不在。印判のなかなか状態のよい小鉢なんかもまとめてあったけど、主がいなきゃあ、話にならない。仕方がないからそのまま鬼子母神へお参り。いうまでもなく鬼子母神はお産の神様。今のところ僕には必要のないご利益だが、兎に角、ここまで来たわけだからお参りをし、「ざくろ絵馬」を頒けて頂いた。
この鬼子母神はぐるりと後ろへ廻るのが面白い。実は本殿の直ぐ裏には

北辰妙見菩薩

のお堂が鎮座しているんだよ。なぜ、鬼子母神に北極星の仏様が表裏一体で祭られているのかはわからないけど、本殿にぴったりと添い付くように北辰妙見社がある。そして、妙見社の直ぐ右手脇にある一基の墓。これが浄瑠璃の竹本肥前掾・竹文字太夫の墓だってことを知っている人はもっと少ない。しかも手入れされることもなく、ただそこにある浄瑠璃太夫の墓。解説板の類いもないし、囲いもされていない。まるで忘れ去られたようになんとなくそこにあるって感じだが、これもなぜここなのかはわからない。
そういうミステリアスな側面を持つ雑司が谷の鬼子母神。ちゃんと調べてから考えれば、北辰妙見にしたって、浄瑠璃太夫の墓にしたって、きっと何かわかるかもしれない…けど、境内の一隅にある大黒堂で根岸の羽二重団子が藁細工の「すすきみみずく」で有名なおせんに肖って作った

おせんだんご

を熱いお茶で平らげている間に、そんなことはどうでもよくなってくるだろう。

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浅草酉の市・その一

毎度毎度で申し訳ないが、色々あって更新がなかなか思うようにはいかない。特にここ三週間は追い立てられるようにアレやコレややっていたんで、手が付けられなかった…と言い訳…もう聞き飽きたね…が、まあご容赦して貰おう。

11月といえば「酉の市」が東京の風物詩だ。今年は5日、17日、29日と三回あった。
その昔、昔々まだ東京が江戸だった頃の酉の市は、

正月がそろそろ来るぞ!!

と知らせる「祭」だった。宝井其角も

春を待つ事のはじめや酉の市

と一句詠んでいる。そんな春を告げる「酉の市」は矢張り千束の鷲神社がなんといっても一番賑やかだ。みんな福を掻き込めとばかりに押し寄せる。酉の市の目玉はいうまでもなく、

熊手

だ。福神講という講中に加盟している熊手商が境内に犇めき合って、色んなデザインの熊手を売っている。赤物・青物・みの・黒爪・檜扇・宝船…そのデザインを見て歩くのが楽しい。勿論、見ているばかりじゃあなくて、売り手と上手く駆け引きし乍ら買うのが面白いわけだ。
けど、先月のいつだったかの読売新聞に

熊手に値札

という実に野暮な記事があった。現代の人は値札が付いていないと怖くて買えないから、一万円以下のものに限って値札を付ける、ということが熊手商の間で持ち上がって、いざ値札を付けてみるとなかなか買い手に評判だということだ。この記事を読んで、

現代人はそこまで無粋になったしまったのか…

と感じたね。例えば

3000円

という値札が付いてる。お手頃価格なのはイメージしやすい。けど、3000円とはっきり値札が付いた熊手なんかは、その値札通り3000円分の福しか掻き込めなさそうに思ってしまう。もっと沢山の「福」が欲しいと思わないのかなあ。でも、そういうのが売れるというんだから、詰まらない世の中だねえ。
それと最近の熊手商も若い衆なんかは、マニュアルに頼り過ぎて融通が利かないから、それも困る。なんでもかんでも値段表通りみたいな感じで面白くない。矢張り、熊手は売り手と買い手が駆け引きしなきゃあ面白くない。

浅草酉の市・その二

売り手との駆け引きで思い出した話をひとつ。

ある年のこと。酉の市がどういうものかを知らない、酉の市初体験の某友人を連れて、市が人で溢れ返っている夜8時過ぎだか9時だかに行った。三ノ輪駅から鷲神社参道に向かう道は屋台が軒を連ね、よい匂いが鼻先を擽る。参道に近づくにつれ、人々の歩む速度が鈍くなってきてた。やがて、ピタリと停まる。凄い人だかりだ…人の波に押し潰され乍ら1時間も並んだろうか。漸く参拝も済ませ、社務所で「掻っ込め」を頒けて頂く。

さて、「掻っ込め」を頂くと、愈々境内に犇いている熊手の屋台をあっちこっちぐるぐる廻り乍ら眺めていた。眺めるだけでも1時間は悠にかかる。もう11時に近い。あと1時間で終わるというのに、相変わらず煌々と裸電球が軒下を照らし明るい。

色々と飾りつけた派手な熊手が沢山あるが、僕はシンプルなヤツが好きだ。で、ふと一軒の屋台で足を止める。その時、横にいた(どこかで一杯呑んでから駆けつけたような)仕事場の先輩後輩らしき2人組と若い衆の交渉が始まった。その直ぐ横で今度は僕のところにお婆ちゃんがやってきて、駆け引きが偶々始まった。某友人は酉の市初参加だから勝手がわからず、二組の交渉の間に挟まって、熊手商とのやりとりを傍観している。

先輩後輩らしき2人組相手に若い衆は黒爪と呼ばれる種類の熊手を大・小出して、一生懸命吹っかける。因みに熊手というのは基本的に値段はない。あくまで売り手側の言い値だ。僕は若い衆がその2人組に出していた黒爪の小さい方を指して、お婆ちゃんに、

アレ、いくら?

と聞くと、お婆ちゃんはスススーっと若い衆が2人組相手に交渉している間に入り、交渉中なはづの小さい方を持ってきて、

1万5000でいいよ

という。

もう少し、負からない?

と聞くと、

じゃあ、1万2000

そこで、

うーむ…よし!1万なら買うよ

と僕。するとお婆ちゃんは、あっさり

いいよ、1万で

するすると交渉成立だ。それを傍から見ていた某友人は、交渉を終えた僕に

今買った熊手、さっき隣の2人組には2万6000円で若い人が交渉していたよ
で、なかなか負けようとしてなかった
やっと負けて3000円だった
それもたった3000円負けるのに家族会議開いてるみたいに若い人たちが集まって相談してたよ

と耳元でヒソヒソいう。
黒爪熊手がおひとつ2万6000円。しかもマニュアル坊やの若い衆は負けて3000円。それも家族会議付き。それがだ。片や僕は1万5000円。さらに負けさせて1万円で熊手を手に入れてしまったわけだ。傍から見ていた友人は、ただただ唖然。
けど、負けさせるばかりじゃあ、売り手が可愛そうだ。だから、ちゃんとご祝儀で1000円乗せて(ホントは5000円乗っけてあげるべきなんだけどね…)意気揚々引き上げた。引き上げる時、ちらりと横を見たら先輩後輩らしき2人組はまだ若い衆と交渉していた。

若い衆よ、あまりマニュアル、マニュアルしない方がいいぜ。こういうのは縁起物だ。がめつく売ろう売ろうとしないで、もっと楽しまなくっちゃあいけないよ。お婆ちゃんをもっと見習いたまえ。
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それでは「春夏冬、二升五合」をお願いまして、皆々様の御手を拝借。

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熊さん。今のお人で何人目だい?
著者寸描(プロフィル)

浮世名詮〔うきよのめうせん〕

Author:浮世名詮〔うきよのめうせん〕
東西東西~。
さて、これより語りまする者はその名を「名詮」と申しまする。

性格は可成ふざけて居りまして、朝イチから行動すればよいものを、昼も過ぎ、夕闇の濃くなる頃から東都のあちらこちらへ出没し、状況に応じて色々な人物を演じ分ける素ッ惚けた根無し草。

まあ、気楽に気楽にお付き合い下りまするよう、隅から隅まで、ズズいっとお頼み申し上げまする。

先づは

乍憚口上
乍憚口上」つづき
乍憚口上」むすび

を一読下さりまするようお願い申し上げまする。

千穐萬歳大入叶

熊八ブログをケータイしておくれっ
ちょいと、そこのお前さん。無視していくんじゃないよ。めうせんの「熊八ブログ」がケータイでも見ることが出来るっていうじゃあないか。おや、知らない?まあ、この人はなんて野暮なことをいいなさんのかねえ。
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「文は遣りたし、書く手は持たず」なんて謙遜、遠慮なぞは無用ってもんでございやす。へい。

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